43話「突鋼仙」

 機体の整備が完了した事をタイガと部下が伝えに来た。
ユウジは待機室の床に座したまま目を閉じその報告を聞いた。
 聞いている訳ではない。
聞く以前に携帯モジュールで整備状況は確認した。
報告をやり過ごしながら、頭の中で戦をしていた。
敵味方の戦力を頭に入れると5分間だけ頭の中で戦闘をした。
そこには苦境以外存在しなかった。
何度も戦う。
思考の中に存在するスネークマンは強い。
思わず一機で突っ込みたい衝動に駆られる。
俺だけならば良い。
俺一人ならば何もかも投げ捨てて奴の旗艦へ特攻しよう。
だが俺を欠いた部隊はあっという間に鉄屑になっている。
仕方の無い事だ。
弱ければ死ぬ。
ふと上官である城壁と呼ばれる男の顔が浮かぶ。
 奴だ。
奴のせいで俺は俺の戦いをする事が出来ない。
手枷や足枷としか思えぬ弱卒の兵を俺に与える。
せいぜい使えると思ったのがタイガ・アイという少年、奴の娘のルーリス。
「その上ルーリスは後詰か……手枷では飽き足らず手足すら斬るか…城壁」
 報告が終わり、タイガが立ち尽くしていた。
「タイガお前は兵の中で一目置いても良い……俺とお前だけだやれるか?」
「無理でしょう」
「そうだな、ユウジ・ミヤシロは一人だ。一人で崩せるのは布陣の一角よ ええい!」
拳で地面を打つ。
そうとも。
ユウジ・ミヤシロは一人なのだ
「知っていますか隊長、兵が隊長の事をトッコウセン(突鋼仙)と呼ぶ事を」
「突鋼仙か…‥鋼すら貫く男という事か」
悪くない。
「僕にも格好良いあだ名が欲しいです」
「ふん、一人前の男なってから言うのだな、今のままの貴様は本名ですら勿体無い。 貴様の名前はタイガ・アイ、俺の国の言葉で「虎目」だぞ? こんな弱々しい虎の目では獲物を逃がしてしまうな」
 力強くタイガの肩を叩いた。
おい、そう言うとタイガは目を見開きながら頷いた。
タイガの後ろに控えた兵を見渡す。
今の話でいくらか緊張が解けている。
肩幅程に足を開く、兵はユウジの挙動を見ると一斉に姿勢を正して直立した。
 思えば調練は全体の動きを、通信を使わずに伝達する事に徹底していた。
手の動き、足の運びで兵は指揮官の意図を読めるようになっている。
それは機動兵器に搭乗している時も平時の軍務の時も同じだった。
「良いか、俺はこの戦でお前達に俺の程の強さは求めない。 そうだな、俺は一つの部隊が俺一人の働きが出来るように指揮する。 いわば部隊一つが俺でありお前達全てが俺だ……俺たちが突鋼仙だ」
俺たちが…、そんな呟きが兵の間から漏れている。
「俺には志がどうとか国に有るべき姿を求めているわけではない。 この国には友が居る。命を懸けても良いと思える友が、俺はその者達の為に命を懸けるのだ」
兵が頷く。
中には拳を握り締めている者も居る。
「逝くぞ。 我等突鋼仙、鋼すら貫く男達! 鋼が貫けて蛇が倒せぬ道理は無ぇ」
「我等…‥突鋼仙」
タイガが呟いた。
兵の中から小さなさざ波の様な呟きが繰り返され
「我等! 突鋼仙!」
次から地鳴りの様な唱和が広がった。

 やがて一人になった。
興奮で膝が震えている。
兵が居る前では足を踏ん張り、歯を食い縛っていた。
怯えとはまるで違う、自分の中に在る押さえられない衝動に近かった。
闘いたい。
自分の思うがまま戦場を駆け抜けていたい。

 待機室にアリス・リデルが入って来た。
視線が合う。
言葉が無かった。
 以前リクセントで闘った時に出会った女。
淡い金砂の様な髪、湖水を湛えたような瞳、戦場ではまるで気に留めなかった。
今は儚く、美しいものだと感じる。

 そんな事を云う必要は無い。
この思いは己への自戒にも等しかった。
戦場を渡り歩く軍人が救国を望む女に惹かれる事自体が間違いなのだ。
今でこそリクセントに帰属しているが、以前はDCの軍人だった。
上官が気に入らなかった。
 当時、DCの軍人としてリクセントを攻める事は構わなかった。 しかし人攫いのといった野盗の類の真似は誇りが許さなかった。
軍人の誇りではない、人としてのものがだ。
あの時の悲憤を忘れはしない。
上官の命令ははっきりと覚えている。
胸中でその言葉を反芻する度に「お前は人を辞めろ」と言われているようだった。
火の様に身体が熱くなり、猛然と抗議した。
我等DCは民衆の義憤のため義挙した軍ではないのか、と。
上官は鼻で笑っていた。
人攫いすら軍功と考えている、嫌な顔だった。
己の所属していた部隊、恭順しない者は全て倒した。
闘いは一方的で遮る者は無かった。
叛乱を起こしたことに後悔は無く、あの時俺は人間に戻れたのだと思う。
叛乱に恭順した部下達も涙ながらにそう言っていた。


「芝居がかった激励など、柄にも無い事をしているな」
 自嘲ながらにユウジは言った。
語気に嫌味は無く、自身に対する驚きを吐露している。
「以前の「ヘラクレス」からは考えられない事」
 アリスはふふ、と笑いながらユウジに付けられているコードネームを持ち出してきた。
今もコードネームの由来となったシュバルツアイゼンに搭乗している。DC戦役から数えて二代目、リクセント公国が設計レシピのパーツを集めて組み立てたシュバルツアイゼンだ。
「俺が部下を持つなんて性に合ねぇんだよ」
アリスは、そうねと、言いながら宥め、ユウジの隣に座る。
「それに貴方、煙草やめてたの?」
「ん?」
軍服のポケットを探るが一箱すら入っていない。
今まで部隊の調練と編成に専心していた。
寝食を忘れて没頭する事も少なくなかったと思う。
それ以上に兵を怒鳴りつけるたびに灰皿に吸殻を押し付けていく。
まともな機動を教え込むまでにまともに吸われず潰した煙草は数え切れなった。
いつの間にか、そんな動作が億劫になった。
「そういう匂いがしないから」
「暫らく…吸っていないな。エリィ殿が煙草臭いとうるさいんだよ」
「ふぅん、お婆さんには優しいんだ」
「なんだろうかな、お袋みたいで逆らえねぇ」
「優しいんだ」
「うるせえ」
「でも……‥そんな事、前から知ってたよ」
はっとアリスの顔を見る。
赤く高潮していた。
照れながらも瞳には哀しげな光があった。
美しいと思ったが、この女には出来れば笑っていて欲しかった。
その事について深く考える事は自分に禁じた。
「逃げても良かったのに」
「逃げてどうする? 自分自身を裏切る事は、出会った友を裏切る事だ。 俺はお前に背を向けて生きたくはない」
蒼い瞳。
優しげに微笑んでいる。
俺の手がアリスの肩を抱いている。
驚いて身体が硬直するが、すぐに力が抜けて身体を預ける。
顎の下にある金砂の髪から解けた花の匂いが清々しい。
このままアリスを奪ってしまおうか。
 情欲を振り払い、立ち上がる。
アリス泣きそうな顔だった。
キスくらいすべきだった。そんな後悔が現れる。
「時が無い事がこれ程に憎らしいとは」
本心だった。
 ごめん。 そう言うとアリスが顔を伏せた。
言葉が刺さる、胸の中を槍でかき回された様な痛みが奔った。
行く。 短く言い、アリスに背を向ける。
心に寒い風が吹いている。
闘いたかった。
出来るならば野戦で思う様駆け抜けたい。
思いを噛み締めながらアリスに背を向ける。
俺が居なくなればすぐに軍人の顔に戻っているはずだ。

 


●ネタばれてきな要素を多分に含んでいますのでご注意してください。

ジジ・フラグ

ユメ・神原

カミュ・神原

ガンドレス

ククル

フント・ダン・ケイン

フォンリス・ガイ ・ブラヘルダー

クロネ

スネークマン

シャッフル・デイバック

キキ・ヴォルフ

ノロ・ヴォルフ

レギュルド・ロンファン

トビカゲ・浦島

ルーク・フェニックス

ルーリス・フェニックス

ナンド・ヴォンダット・ヘルム

ダン・ダ・ダン

サイ・アヤミ

ゲイル

忍咲 舞

ナッツ・ピ・ナーキン

スサ・ノ・ギガンテック

エン=スノウフィールド

ミリアス・マカバイ




ゲシュペンストMkW・YUI

フルアーマー・ゲシュペンストMkW・YUI

アルト・ガイスト

V・ガイスト

量産型アルトアイゼン

マガルガ・三宝神具

エクスオーネ

マイ・ソード(MySword)

ナイト・オブ・リクセント(Knight・Of・Rikcent )

ガンドレス

アルトパイソン






広告 通販 無料 チャットレディ ブログ blog